入学試験を控えて初めて小論文に取り組む人の中には、初めて「だ・である」体で文章を書かなければならないことに戸惑う人も多いようです。というのも、学校内外で表彰も行われる、読書感想文、税の作文、人権作文などの優秀作品の展示を見ていても、「です・ます」で書かれた文章、「だ・である」で書かれた文章がいずれも登場します。一つの文章の中では、「です・ます」と「だ・である」が混ざっていてはダメで、どちらかに統一しなければならないということを教えていることは多いのですが、学校現場では、このような作文で「です・ます」と「だ・である」のどちらかがよいか指定していることは少ないようです。
小論文や志望理由書ではどのように使い分ければよいのでしょうか。
敬体と常体
敬体(です・ます)と常体(だ・である)の違い
はじめに、文末表現に「です・ます」を使って書かれた文章は敬体、それに対して、文末表現に「だ・である」を使って書かれた文章は常体といいます。
もう少しはっきり言うと、敬体は、「です」「ます」の助動詞を使う文章で、相手に敬意を示します。常体は、「です」「ます」の助動詞を使わない文章で、相手への敬意を省略します。
敬体のことを「です・ます調」、常体のことを「だ・である調」と言うこともあります。
常体はすべての文末が「である」で終わるわけではない
常体は、「です」「ます」を使わないだけで、すべての文末が「である」になるわけではありません。
中には、「私は○○と思うのである。筆者は○○と主張したのである。○○したいのである。」とすべてに「である」を付けて書いてしまう失敗談がありますが、アニメのキャラクターのようにほほえましく聞こえたりします。
また「だ」と「である」は同じ文でどちらを使うか迷う場合もあると思います。「だ」と「である」の違いは、相手によって印象が違うと考えていればよいです。「○○に賛成だ。」「○○に賛成である。」は意味としてはどちらも同じですが、印象としては、「だ」の方は簡潔だと感じたり、切って捨てるようで乱暴に感じたりする一方で、「である」の方が丁寧だと感じたり、強調していると感じたりするという、それぞれの場合があります。これは相手によります。
敬体と常体で意味は同じ
敬体と常体では相手に対する敬意を除いては意味が違ってくるわけではありません。常体の方が強く感じられ、言い切っている印象を持つと思っている人もいますが、本来、文が表す意味には違いはありません。
一般的な敬体と常体の使い分け方
一般的には、常体は、論文・レポート、新聞などで使われます。常体は簡潔にものごとを伝え、自分や相手の立場に関わらない客観的な表現をする場合に使われます。常体の方が文字数も少なく済みます。
また敬体は、手紙などで使われます。敬体は相手に対する敬意を表し、書き手や読み手の立場を意識していることが伝わります。柔らかく、語りかけるような印象になります。
小論文では常体を使う
小論文では、原則、常体を使います。自分の意見を正しく相手に伝えるという点から、簡潔で客観的な表現が求められます。
ただし、小論文の中でも、「『です・ます』体で書きなさい」と特別な指示がある場合にはそれに従います。また「○○に対する手紙を書きなさい。」「○○大学の○○についてあなたの○○を述べなさい。」などの設問の場合には、少し検討が必要です。
現代文など各科目の論述問題でも、常体を使っていると思いますが、こうした試験では客観的な正解が存在していて、解答する人や採点する人の立場は関係ないからです。
志望理由書では敬体か常体か
願書、志望理由書、自己推薦書、エントリーシートなど入学試験にあたって大学に事前に提出する文書では、敬体と常体の使い分けは場合によります。
記入例や指示があればそれを参考にしましょう。
「○○学部への入学を希望する。」「大学では○○の研究をしたい。」「高校では○○部の副部長を務めた。」などのように自分や相手に関することが多く書かれている場合は常体は違和感があります。一方、研究計画書に近い内容や志望する学問分野について詳しく書いたような内容では敬体では書きにくいものです。
例えば、提出する書類全体の最初に敬体で書かれた部分があり、添付資料として志望理由書がある場合は、この部分は常体でよいと考えるのがよいでしょう。
全体の書類や記入欄の体裁によって、敬体か常体かを検討しましょう。
敬体、常体のどちらかに統一すること
小論文にしても、志望理由書にしても、大切なことは敬体か常体かのどちらかに統一することです。文書全体で整った印象、一貫した印象が必要です。人に対する敬称の使い方を含めて、用語も統一していることが必要です。敬体の場合には、「○○さん」などの言葉を使っても違和感がありませんが、常体の場合には、敬称を略します。
ブログ、SNSでは、敬体と常体を混ぜて書くのも、効果的な表現になる場合がありますが、小論文・志望理由書のように役割が決まっている文書では統一しましょう。
これまで常体の文章を書き慣れていない人は少し苦労するかもしれませんが、練習すればすぐに慣れて常体の文章を書けるようになります。