小論文の書き方

トランプ氏当選!小論文・入試でアメリカ大統領選挙はどのように出題されるか

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Donald Trump

出典:http://www.newsweekjapan.jp/

アメリカ大統領選挙は、番狂わせで共和党のトランプ氏が当選を果たしました。民主党のヒラリー・クリントン氏は及びませんでした。アメリカ大統領選挙の仕組みは、政党の予備選挙、全国党大会、そして一般選挙、正式な選挙人団による投票と数々の段階があるので、複雑で分かりにくいものです。中学入試の時事問題や、大学入試センター試験の現代社会や政治・経済の定番の出題元です。


2017年の入学試験では、アメリカ大統領選挙は題材になるのでしょうか。

大学入試では直前の時事問題は出題されにくい

結論からいうと、直前の時事問題は大学入試では出題されにくいものです。遅くとも秋には、センター試験などの大規模なレベルであれば前年度には、試験問題の作成がすでに済んでいます。加えて、事態が変化しやすかったり、政治的な問題で見解が分かれるようなテーマは避けられやすい傾向があります。ただし、中学受験レベルでは単純な事柄であればターゲットにされやすいです。

まずはセンター試験レベルの基礎知識をおさらい

センター試験の世界史や政治経済などのレベルでは下記のような点は押さえておきましょう。

  • アメリカ大統領の任期は4年。憲法修正条項により3選は禁止。唯一の例外はフランクリン・ルーズベルトのみ。
  • アメリカ大統領選挙は、直接選挙ではなく州ごとに選挙人団を選ぶ間接選挙である。選挙人団が大統領と副大統領を同時に選挙します。
  • 50州の上院議員、下院議員の合計と同じ数が選挙人数になっている。これ以外に首都のワシントンDCも3名の選挙人を選出する。
  • アメリカ大統領や各長官などの閣僚は国会議員を兼任しない。大統領が閣僚を任命し、上院が審査を行う。
  • 4年に一回決まった期日に選挙がおこなわれる。一般投票は11月の第一月曜日の次の火曜日と決められている。2016年は11月8日。
  • アメリカ大統領は議会の弾劾手続きの規定はあるが、条件が厳しい。実際に弾劾された大統領はいない。辞任したのはニクソンのみ。
  • アメリカ大統領は議会を解散したり、議案や予算案を提出することはない。議会に対する要望を「教書」と呼んでいる。
  • アメリカ大統領が在任中に暗殺されたのはリンカーンなど4例で、大統領が死亡すると、副大統領、下院議長、上院仮議長、国務大臣などを優先順として自動的に昇格する。
  • 二大政党制が特徴。共和党は南部の農業地帯などで強く保守層が支持基盤で、民主党は都市部で強く労働者などが支持基盤となっている。

かならずアメリカ大統領選挙の仕組みは理解しておきましょう。また、アメリカ大統領は1月20日に新しい任期を迎えることになっています。それまではオバマ大統領が務めます。

間接選挙という点では、一般投票の結果はトランプよりも、ヒラリー・クリントンの得票の方が上回りました。アメリカは州の自治権の強い連邦制国家であり州ごとの選挙人団を通じた選挙のしくみでこのようなことが起こります。

アメリカ大統領選挙が試験で出題されるポイントは?

アメリカ大統領選挙が試験に出題される場合は、事態が変化しやすい事柄、直前の事柄は出題されにくいと思いますが、以下のようなキーワードに関する議論は一般的な内容として取り上げられる可能性はあるでしょう。キーワードごとに見ていきます。

トランプ次期大統領の公約には、極端とも非難されるようなものが多くありました。実行に移されるのかは未知数ですが、これらについての基礎的な知識も確認しておきましょう。

自由貿易

トランプ次期大統領の公約に、TPP(環太平洋経済連携協定)からの離脱、NAFTA(北米自由貿易協定:カナダ、アメリカ、メキシコの自由貿易協定)の再交渉・離脱というものがありました。

分かりやすくいうと、自由貿易に反対し、保護貿易、保護主義を取るということです。

ここで自由貿易の意義を押さえておきましょう。WTO(世界貿易機関)やEUなどの地域統合やEPA・FTAなど取り組みに代表される自由貿易は、第一に経済を活性化させるというメリットがあります。他の地域に対して考えると市場が大きくなり競争力が増すことになります。第二に相互依存が深まり安全保障の観点からも国家間の衝突が起こりにくくなることがあります。第二次世界大戦を引き起こしたブロック経済の反省です。

自由貿易やさらにヒトやモノの移動も自由化するグローバル化は弊害もあります。関税、国境という障壁によって守られていた国内の競争力の弱い産業は、国際競争にさらされることになります。これは農産物・製品だけではありません。多国籍企業が進出先を選択したり、消費者がより安い商品を選択するという行為によって、労働者もより賃金の安い国の労働者と競争することになります。

トランプが支持された背景には、自由貿易・グローバル化によって、外国の製品が輸入され、外国人労働者が押し寄せて、自国の製品が売れなくなり、自国の労働者の職が奪われたという認識が広まっていたことです。イギリスのEU離脱問題も同じような構図が背景にあります。

移民排斥

アメリカは移民の国と言われますが、政治の中心はごく一部の例外を除いてWASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント、White Anglo-Saxon Protestant)と呼ばれる人々でした。一方、建国以来、移民を多く受け入れてきました。特にヒスパニックと呼ばれるラテンアメリカからの移民が増えています。

しかし、国内の産業の競争力が低下し、雇用が失われると不法移民により自国の労働者の職が奪われるという認識をする人々もでてきます。

また、移民がふえることによる文化的なあつれきもあります。

日本でも少子高齢化への対応策として、外国人労働者の受け入れが議論されることもあります。二つの反対論があり、一つは自国の文化を守るために移民はなるべく受け入れない方がよいという意見と、もう一つは単純労働者を受け入れるという認識では新たな差別や貧困を生むという意見です。現状の外国人技能実習生の待遇などを見ても、安く働く労働力という認識では新たな問題を生むことは確実です。

ヘイトスピーチ・ヘイトクライム

トランプの当選によって、ヘイトスピーチ・ヘイトクライムが肯定されたと認識されるようになるのではないかという懸念もあります。ヘイトスピーチは人種、国籍、宗教、などに基づいて個人や集団を攻撃、侮辱する発言、ヘイトクライムはそれによって暴行等の犯罪行為を行うことです。

選挙中にも、ヘイトスピーチを繰り返したトランプが当選した背景には、ポリティカルコレクトネス(政治的に正しい表現に言いかえること。差別や偏見、固定観念が含まれない言いかえ。)に嫌気した有権者が多かったのではないかという指摘もあります。かつて「スチュワーデス」と呼んでいたものを「キャビンアテンダント」と呼んだり、「セールスマン」を「セールスパーソン」と呼ぶのもその一例です。これを「言葉狩り」と捉えて、表現の自由の制限ではないかという主張も存在します。

また日本では、ヘイトスピーチ規制法(正式名称「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」)が制定され、ヘイトスピーチを許さないという考え方が法律に定められました。罰則などはありませんが、この法律の制定後にヘイトスピーチを行うデモの公園の使用申請を自治体が拒否したりした事例もあります。

ヘイトスピーチは許されるものではありませんが、対策が難しいのも事実です。「死ね」などの表現は脅迫として取り締まることができるかもしれませんが、一般的には政治的な発言だと言われてしまえば、そのものを禁止することは言論の自由を侵害していると指摘されかねません。事前に制度として禁止するよりも、「言論には言論で対抗せよ」というモア・スピーチの原則という主張もあります。

18歳選挙権

今回のアメリカ大統領選挙の一般投票では、18歳から30代前半までの投票動向を見ると、トランプよりもヒラリー・クリントンの方が支持が上回っていました。

日本では18歳選挙権が導入されたり、SELDsなどの学生を主体とした政治運動が注目されたりしました。日本では投票者や人口全体の割合でも、高齢世代が上回っている中で、高齢世代の意向で政策が決定づけられることをシルバーデモクラシーと批判的に表現されることがあります。若年世代が現状を打破するためには改革が必要なのであると認識するのに対して、これまで恩恵を受けてきた高齢世代が変化を拒んで引き続き若年世代に負担を強いる構造と見られることもあります。社会保障と経済成長のバランスや、短期的な視野と長期的な視野のバランスが求められます。

ポピュリズム

ポピュリズムは、迎合主義などとも訳されます。政治に関して理性的に判断する知的な市民よりも、情緒や感情によって態度を決める大衆を重視する方針、手法のことです。

トランプが、外国人への差別的発言、過激な政権批判を行ったのもその代表的な例です。「減税」や「議員報酬の削減」なども時にこうした大衆の情緒や感情に訴えるために行えば、ポピュリズムの典型ということができるでしょう。

政治が一部のエリート層によって担われることを防ぎ、一般市民の参加を促進するという点では、こうした大衆重視の手法も意義があるかもしれません。

しかし、民主政治は常にポピュリズムに堕する危険性を持っています。ナチス政権の誕生は選挙を通じておきたことも忘れてはいけません。反知性主義とも言われますが、問題を単純化し、思考や議論を回避することがいかに危険か認識する必要もあります。

この動きは日本など他国に波及するか

イギリスのEU離脱問題やこのトランプ大統領の誕生は、グローバリズムに逆らおうとする世界的な流れと見るべきかどうか、という点も考えなければなりません。民主党の予備選挙で、善戦した社会民主主義者を自称するサンダースの動きも、グローバリズムに反対するという点では共通しています。

日本とアメリカの日米安全保障条約も大幅な見直しが行われるのか、現在のところ不透明です。

受験生のみなさんは、まずは基本的な事柄を良く理解して、日本国内の身近な事例に結び付けて議論できるようにしておくと良いでしょう。