前回の記事、小論文とは―小論文って何?の続きです。
小論文は意見を書くものでしょうか。小論文ではどんな意見を書くのがよいのでしょうか。
「小論文は意見を書くものだ」と説明する人がいますが、これはある意味間違いです。
小論文は意見を書くものか
意見を問われない形式もある
一つの理由は、前回、書いたように小論文はいろいろな形式があるからです。単なる要約が求められている場合は、もちろん意見を書く必要はありません。また、例えば入試要項に小論文で「意欲・能力・適性等を総合的・多面的に問う」と書いてある場合は、「意見」や「論理構成」よりも、知識など他の点に評価の重点がある場合もあります。
意見を書かなければならない場合
要約などの場合や、文中の用語やテーマについての説明が求められているだけの場合は意見を書く必要はないでしょう。
それ以外の場合でも、「意見を書かなければならない」と意識しすぎることはありません。「意見」といっても様々なタイプがあるからです。人が何か文章を書く場合には、何かの意見が常に含まれます。意見が含まれない文章の方がまれです。
このような前置きをしたうえで原則としては、小論文は、あることに対する意見を書くことを求められています。また、この表現方法を問われることが多いと考えて良いです。
主張と感想の違い
ただし、ここでは意見と言っても、主張と呼ぶべき場合と感想と呼ぶべき場合とを区別する必要があります。
主張とは、ある意見を他の人に認めさせようとするものです。感想は、単にあることについて感じたことや思ったことを述べるものです。
小論文では主張を明確に
小論文では、主張を明確にすることが求められます。相手が存在していて、納得させるということを意識しましょう。
例えば、「運動会は楽しかった。」が単に自分の感じたことを述べる感想であるのに対して、「運動会の組み体操は中止すべきである。」であれば主張ということになります。
感想も意見の一つではある
ただし、感想に見える一文も、相手によっては伝わり方が違います。「運動会はつまらなかった。」と子どもがクラスメイトに言う場合は単なる感想と捉えられるでしょうが、運動会を企画した校長や教員に言う場合は違った印象になります。感想も意見を伝える手段の一つではあります。書く人や読む人が入れ替われば、捉え方が変わります。
世の中に対して有益な意見を
小論文でははっきりと読む相手を意識して意見を表現することが求められます。
さらに、誰のために主張するのかという点では、世の中全体に対して有益な意見が求められます。自分や自分の仲間だけが得をするような意見は相手を納得させることはできません。
「世の中」というのは、人間、世界、日本と場合によっては置き換えられます。入学試験、入社試験などでは、これから入る集団、例えば大学、会社、その職業、業界全体のために小論文を書くことが求められる場合もあります。
原則としては、人間全体として世の中に対して有益な意見を書くと考えておきましょう。
意見の種類
意見の中にも、様々な種類があります。
行動、事実、価値の3つの意見がある
判断の対象になっているものごとに3つに分けると、行動についての意見、事実についての意見、価値についての意見があります。
行動についての意見とは、
・路上喫煙を禁止すべきだ
・二酸化炭素の排出を削減すべきだ
・夫婦別姓を認めるべきだ
などです。自分や他人または全体が行動することについての意見です。
事実についての意見とは、
・STAP細胞は存在する
・地球は太陽の周りをまわっている
・自殺の原因は経済的な理由が最も多い
などです。書き手と読み手の立場に関係しないものは、ほとんどがこの、事実についての意見です。
価値についての意見とは、
・働くことが最大の幸せである
・ピアスは高校生にふさわしくない
・スマートフォンは便利だ
などです。あることに価値が認められるかなど、価値観に関わることについての意見です。
行動についての意見が書きやすい
このうち行動についての意見が最も小論文に適しています。事実についての意見は、資料を収集したり提示したりすることが難しく、試験場で書く小論文には向きません。また価値についての意見は、人によって判断が異なり、抽象的になりすぎるため小論文には向きません。
小論文では、ある意見に対する意見を求められる場合もあります。
次の記事では、ある意見に対して意見を書く方法を考えます。